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建設DX最前線

佐伯綜合建設がBIMで
切り拓く、建設現場の未来

建設業界は、長時間労働や人手不足など、多くの課題を抱えている。これらの課題を解決するために昨今多くの企業が導入し始めているのが、BIM(Building Information Modeling)や遠隔管理システムといった最新のデジタル技術だ。岐阜県加茂郡に本社を置く佐伯綜合建設もまた、2017年頃からBIMを導入し、建設DXを推進することで、これらの課題解決に挑んでいる。

建設現場におけるデジタル技術活用という挑戦

社長のトップダウンで決まった、佐伯綜合建設のBIM導入。そのチャレンジの背景には、建設現場における長時間労働の短縮と生産性向上という狙いがあった。

ただ、当初は導入したものの、社内展開は思うように進まなかったそうだ。そのため同社では、新たにBIMの専門部署的な立ち位置である「生産設計グループ」を発足。BIMを活用した施工図作成や現場支援を推進したことで、労働時間短縮と生産性向上に大きな効果が現れた。

まず第一に、BIM導入により、現場監督の負担が大幅に軽減された。BIM導入前は、施工図を作成するため現場監督が長時間労働を強いられていたが、導入後は専門の部署での施工図作成が可能となり、現場監督の労働時間が削減されたのだ。

また、3Dモデルを活用することで職人との意思疎通が円滑になり、手戻り作業が減少した。これは工期の短縮やコスト削減にも繋がっている。

BIM導入から数年が経過し、設計から施工までのあらゆる段階でその活用が実現した今、BIMは佐伯綜合建設にとって、なくてはならないツールとなった。それは現場の生産性向上だけでなく、顧客への提案力向上や協力会社との連携強化にも貢献していると言えるのではないだろうか。

若手社員を中心とした循環システム

同社では、主に若手社員を対象に、BIMや遠隔管理システムの習得を支援している。

具体的な育成支援としては、研修制度の充実や、BIM検定取得の推奨。また社内マニュアルを作成することで、知識や経験の共有を図っているのだそうだ。

若手社員たちはこれらの支援を通じて、新しい技術を柔軟に吸収し、自らが中心となって積極的にBIMを活用している。彼らの存在は現場の効率化や生産性向上に良い影響を与えており、組織として、BIMを軸にした成長のサイクルが生まれていると言えるだろう。

佐伯綜合建設は、BIMや遠隔管理システムなどのデジタル技術を導入する上で最も重要なのは、人材育成と組織文化だと強調する。

新しい技術を使いこなせる人材を育成するためには、研修制度を充実させるだけでなく、社員が積極的に新しい技術に挑戦できるような組織文化を醸成することが不可欠だ。上下関係などを超えて社員同士が互いに教え合い、学び合う文化を育むことで、組織全体のスキルアップを目指す。

建設DXの二つの柱:BIMと遠隔管理

佐伯綜合建設における建設DXの現場サイドにおける柱は、BIMと遠隔管理の二つである。BIMによる施工図作成の効率化、3Dモデルによる職人との意思疎通の円滑化に加えて、遠隔管理システムを導入することで、現場状況のリアルタイム把握、遠隔地からの管理を可能とした。

具体的なメリットとしては、現場までの移動時間削減と、迅速な意思決定である。遠隔管理システムによって、現場に設置された360度カメラやウェアラブルデバイスを通じて収集される映像やデータを、オフィスで確認することができるようになった。

そして今後は、遠隔管理システムとAIとの連携を強化することで、さらに高度な現場管理を目指す。AIとの連携が進めば、危険な状況や作業の遅延を自動的に検知することができる。より円滑かつ確実な現場管理が叶うだろう。

これらのDXを推進する拠点として、同社は美濃加茂市に新たな拠点を設立する。2025年11月末の完成を予定しており、遠隔管理システムのオペレーションや、AIを活用したデータ分析など、次世代の建設DXを牽引する拠点となる見込みだ。

 

AIの導入で、建設業界はさらに明るい未来へ

佐伯綜合建設は、BIMの最大の利点はデータベース化にあると考えている。BIMという「箱」に集約・蓄積された建築情報をビッグデータとして活用することで、最適な設計や、コストサービスの提供を、AIによって自動化することができるからだ。

そのために同社では、AI議事録の導入など、試行錯誤を繰り返しながらAI活用の可能性を探っている。この取組みは、建設業界におけるAI活用の先駆けになるかもしれない。

BIMや遠隔管理システム、そしてAIなどのデジタル技術を積極的に活用し、現場における課題解決に止まらず建設業界全体の持続可能性を目指す佐伯総合建設の挑戦は、他の建設企業にとっても大きな刺激となるだろう。

同社が先駆けて取り組む建設DXは、技術革新の波に乗り、建設業界全体の未来を切り拓く羅針盤となるはずだ。