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佐伯綜合建設が起こす
人材確保の新風

若手人材が集まる建設業界に

様々な分野で危惧される人材不足は、建設業界においても深刻な課題の一つ。岐阜県加茂郡に本社を置く佐伯綜合建設株式会社は、この課題に対し、独自の取組みで挑んでいるようだ。

同社の取組みの特徴は、中長期インターンシップや交流サロンを通じた学生との接点づくり、給与改定や資格取得支援といった待遇改善、さらには職場環境の改革など、人材確保から育成までに至る多角的なアプローチ。これらは現在、建設業界が抱える課題解決の一つのモデルケースとして注目されている。

中長期インターンシップと交流サロンを通じて、高校生に建設業の魅力を発信

佐伯綜合建設は、近隣の工業高校と連携し、中長期インターンシップを定期的に実施している。

インターンシップは、夏休み明けから約2か月間、週に1回ずつ、学生が同社で実際の業務を体験するプログラムだ。対象となるのは、建築工学科の2年生3~4名。学生たちは、BIMソフトの基本操作などを経験し、建設業の面白さや難しさ、やりがいを肌で感じることができる。

インターンシップに力を入れる理由は、高校生のうちから建設業に興味を持ってもらいたいからだ。将来を担う人材育成はインターンシップから始まっていると考え、力を入れている。

実際、インターンシップや企業説明会に参加した学生からは、「社員の方が優しく丁寧に指導してくれ、建設業界のイメージが変わった」といった声が聞かれたという。

一方で、近隣の工業高校・県と連携し、年に1回ほど開催される交流サロンという取組みも。ここでは建設関連企業が数社合同で、学生が知りたい情報を分かりやすく説明する。主な内容は、建設業界の仕事内容や業界構造、必要とされる資格、キャリアパスなど。またサロンというだけあり、一方的な講義ではないことが強みだ。学生からの質問にも丁寧に答え、建設業界のイメージアップと、理解促進を図っている。

待遇改善と資格取得支援で、若手人材のキャリアアップを後押し

さらに佐伯綜合建設は、若手人材の定着とキャリアアップを支援するため、待遇改善と資格取得支援に力を入れている。最近では全社員の給与を段階的に引き上げ、業界内でも高い水準を実現した。これは、建設業界の給与水準が他業界と比べて低いという現状を打破し、優秀な人材を獲得するための戦略的施策である。

さらに、社員向けの資格取得支援制度も充実。資格取得のための予備校費用を会社が負担する制度や、奨学金の代理返済制度の導入などが、同社が進めてきた資格取得支援の一例だ。また、一級建築士や施工管理技士などの資格取得者には一定の報奨金を支給し、資格取得へ向けたモチベーションアップも図る。

次の計画は、年間休日の段階的増加だそうだ。社員のワークライフバランスをさらに充実させるため、現在107日の年間休日を、4年後までに120日に増やすことを目標としている。

誰もが働きやすい職場を目指して

佐伯綜合建設は、多様な人材が活躍できる職場環境づくりにも積極的に取り組んでいる。例えば、女性の雇用促進。男性中心のイメージが強い建設業界において、女性が働き続けるのは簡単なことではないが、だからこそ、設備や制度の革新に力を注いでいるそうだ。

最近では、特に育児休業制度の利用促進に力を入れている。その対象は女性社員だけでなく、男性社員の育児休業取得も推奨。ワークライフバランスを重視する社員を、男女問わず支援する体制を整え始めた。

また、美濃加茂市に新設するオフィスは、トイレや休憩スペースなどの設備面に配慮して設計されているそうだ。女性や多様な人材が働きやすい環境づくりを、会社全体で日々考えている。

「柔らかく」「風通しの良い」雰囲気が、佐伯綜合建設が目指す社風である。そのために、社員一人ひとりの意見を尊重し、年齢や役職に関係なく、自由に意見交換ができる環境づくりを推進していく。

建設業界全体に新たな風を

佐伯綜合建設のこれらの取組みは、人材不足に悩む建設業界において、引いては建設業界のみならず多くの企業にとって、良い参考事例となるだろう。

同社企画室長の佐伯さんは、「自社が魅力的な企業になることで建設業界全体のイメージを変え、多くの若手人材が集まるような業界にしたい」と語る。

同社の挑戦は、まだ始まったばかり。しかしその取組みは、きっと建設業界に新たな風を吹き込み、若手人材の未来を明るく照らすだろう。柔らかく、風通しの良い建設業界の明日は、もうすぐそこまで来ている。